平成14年4月
結核菌Mycobacterium tuberculosisによる肺の感染症。結核菌に対するIV型過敏反 による乾酪壊死を伴う肉芽腫性炎症を特徴とする。初感染病巣と二次性病巣にわけられる。
初感染病巣:飛抹感染により肺胞に達した結核菌は、マクロファージに捕捉されゆっくり増殖する。やがて細胞を破壊して放出され、またマクロファージを貧食するという過程が反復される。この間にマクロファージは結核菌に対する抗原情報を作成し、Tリンパ球に伝達する。こうして数週経過すると結核菌に対する感作Tリンパ球による過敏症が獲得された状態となり、菌を中心として強い浸出性反応が起こり、組織は乾酪壊死に陥り,回りに肉芽腫組織ができる。この初感染病巣は通常径数mmの小さい病巣で、石灰沈着を伴い治癒する。結核菌は所属リンパ節に運ばれ、リンパ節炎もきたす。これは初感染時の特徴で、初感染原発巣と初感染リンパ節炎をあわせ、初期病変群(Ghon complex)と呼ぶ。
2)二次性病変:初期病変の再燃が主と考えられていたが、最近、新たな菌の再感染も多いことがわかってきた。二次性病変は肺尖部に起こりやすい。免疫学的に結核菌に対する過敏状態にあるため、乾酪壊死が速やかにかつ広範に起こり、肺組織の高度の破壊を招く。乾酪壊死が気管支を巻き込み、気管支を通じて懐死組織が排出されると結核性空洞となる。また空洞周囲の線維化のため気管支拡張や肺組織の荒廃を来す。
合併症には、空洞からの喀血、急性結核性気管支肺炎、結核性胸膜炎、粟粒結核などがある。粟粒結核とは結核菌の血行性の散布で、粟粒大、黄白色の、中心に乾酪壊死を伴う小肉芽腫が全身臓器に認められる。
組織学的に結核結節が特徴である。中央の特有な乾酪壊死は、好中球が少なくかつ酵素の阻害物質の存在のために生じる。この乾酪壊死を囲んで類上皮細胞やラングハンス型巨細胞よりなる肉芽腫が形成される。単球・マクロファージから類上皮細胞・巨細胞への分化には、結核菌抗原刺激をうけた感作Tリンパ球から分泌される種々のリンホカインが関っている。肉芽腫の外周にはリンパ球や線維芽細胞からなる非特異的肉芽層を伴う。
結核菌の同定には培養の他、最近ではPolymerase chain reaction(PCR)を用いた結核菌のrRNAあるいはDNAの検出も用いられている。また制限酵素断片長多型性の解析から感染源の特定も可能となった。従来、結核の発生機序のうち、かつて感染を受けたために生じた陳旧性病巣の再燃(内因性再感染)がおよそ90%と考えられてきた。しかし、制限酵素断片長多型性を用いた最近の解析から、新発生の結核患者の30〜40%、耐性菌患者のおよそ3分の2は内因性再感染ではなく、あらたに外部から侵入した菌による再感染と推定されている(とくにエイズ患者の場合)。